MRI 緩和
今回は、MRIの根っこの部分である「緩和」についてです。
これがスタートであるとも言えます。
ですが、しっかり理解できていない部分だったりします。
例えば、体重を計測するときに体重とはなにかがわかっていないと意味がありません。
でも、MRIの場合、緩和現象を観察しているのに緩和を理解していない方が結構いると思います。
緩和
では、緩和とは何か?
「高磁場にさらされた物質にRFパルスを照射したあと、元の状況に戻る現象」のことです。
この緩和の成分にT1(縦緩和)、T2(横緩和)があります。
T1
T1は縦磁化の回復する時間です。
RFパルスを照射後63.2%まで回復する時間がT1です。
63.2%まで回復する時間なので、実際の縦磁化はもっと時間をかけてゆっくり回復していることになります。
ちなみに、組織のT1は脂肪250ms、肝臓600ms、脳白質800ms、水4000ms程度です(1.5T)。
(静磁場強度が高くなるとT1は延長します)
このT1を強調するのがT1強調像です。
T1が短いと、T1が長いとどうなるのか。
T1が短いと縦磁化の回復が速いので、T1強調では信号は強くなります。
T1が長いと縦磁化の回復が遅いので、T1強調では信号は弱くなります。
よって、先ほどあげた脂肪、脳白質、水=脳脊髄液とし脳の断面を考えると、
T1強調では、脂肪が最も高信号、白質が中等度、脳脊髄液が最も低信号になります。
また、造影剤を使用するとT1が短縮するので、T1強調で信号は強くなります。
腫瘍の血流が多いとT1強調像で高信号になることが理解できると思います。
T2
T2は横磁化の減衰する時間です。
RFパルスを照射後36.8%まで減衰する時間がT2です。
T1とは異なり速く減衰します。
組織のT2は脂肪60ms、肝臓50ms、脳白質90ms、水4000ms程度です。
(静磁場強度によらずT2は一定です)
このT2を強調するのがT2強調像です。
T2が短いと、T2が長いとどうなるのか。
T2が短いと横磁化の減衰が速いので、T2強調では信号は弱くなります。
T2が長いと横磁化の減衰が遅いので、T2強調では信号は強くなります。
よって、先ほどあげた脂肪、脳白質、脳脊髄液で考えると、
T2強調では、脂肪と白質が低信号、脳脊髄液が高信号になります。
(ただし、FSEでは脂肪は高信号です)
T1、T2の特徴
水以外はT1のほうが長い。
水以外、急速にT2減衰し、ゆっくりT1回復です。
大事なポイント
T1回復とT2減衰は同時におこっている!
T1回復がおわってからT2減衰がおこっている図がわりとよくありますが間違いです。
同時にはじまり、T2減衰が速くおわっています。
T1像、T2像ではなく、T1強調像、T2強調像です。
T1だけ、T2だけの画像は取得できません。
どちらの影響もはいります。
例外はMRCPなどで用いるHeavyT2です。
TEを極端に長くしてT1の影響をなくしています。
水以外のT2とても短いので、水しか信号は出てきません。
T1、T2の差を利用して画像を作るのがMRIになります。
信号の強さはT1、T2だけでなくプロトンの数にも依存しますが。
これらの差をつけるのに、TR、TE、flip angleなどがかかわってきます。
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