名探偵コナンの映画「緋色の弾丸」でMRIのクエンチがでてきて驚いた件

投稿者: | 2021年4月24日

こんにちは、つよしです。

 

昨年、名探偵コナンの第24作目の映画「緋色の弾丸」が延期して、今年2021年に1年遅れで公開されました!

映画でMRIの事故「クエンチ」がでてきてびっくりしました。

MRIの仕事をしているものとして「クエンチ」という言葉はとても大ごとなので。

 

映画の感想としては「まあまあ」です。

赤井秀一の活躍がもっと見たかった…

 

20年以上コナンの映画を見てきた感想です。

近年は登場人物が多くて、それぞれに活躍させてストーリーを進行させるのが難しそうです。

 

では「クエンチ」の説明をします。

高磁場MRI装置は超伝導状態を作り出すことで磁場を発生させています。

 

0.5テスラ以上では超伝導で磁場を発生させています。

テスラとは単位面積あたりの磁束の数ですね。

 

超伝導とはコイルをぐるぐる巻いて、液体ヘリウムで満たした槽にいれることで電気抵抗が0になります。

 

そのコイルに電流を流すことで磁場を作りだしています。

超伝導状態にするための温度は-269℃というとても低い温度が必要です。

 

通常はこの温度が保たれています。

それがなんらかの理由で超伝導状態が失われると、液体ヘリウムが気化します。

これが「クエンチ」です。

なんらかの理由とは停電、金属吸着、地震、液体ヘリウムの減少などです。

また、MRI検査室では金属が吸着して患者さんがはさまれた場合などに、機械的に磁場を落とす緊急減磁ボタンがあります。

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今回はこのボタンをおしてクエンチを故意に発生させています。

MRI室にあるボタンです。押してみたい衝動もありますが、怖くて押せない。

 

液体ヘリウムは一般的な装置で500~1,000L程度はいっています。

液体ヘリウムが気化すると1Lが770L(25℃)になります。

1,000Lの液体ヘリウムは1,000×770=770,000Lになります。

これはMRI検査室の3倍以上の量になります。

 

気化した液体ヘリウム(ヘリウムガス)は無害ですが、検査室内に充満した場合は酸素濃度が下がり窒息の危険性があります。

酸素濃度をモニターする濃度計がMRI室にあります。通常20%程度です。

また、ヘリウムは極低温なので凍傷を起こす可能性があります。

 

ヘリウムガスが検査室内にもれないようにMRI装置は屋外にクエンチパイプを設置しています。

 

コナンの映画ではこの配管が他の部屋と共有されていたので、ヘリウムガスが病院内に充満しました。

 

実際は共有されることはないはずで、映画ならではの演出です。

映画ではコナンたちのいる部屋が真っ白になりましたが、ヘリウムガスは無色なので、部屋の空気が低温になり白くなっていると思われます。

 

映画の序盤でクエンチが起こり、みんな意識がなくなり、ここで映画

終わるの?とかあせりました。

 

私はクエンチを経験したことはありません。

経験した方の話を聞くと、MRI検査室の天井が配管に沿って凍るそうです。

そして火災と同じようなケムリがクエンチパイプから吐き出されるそうです。

 

最新のMRI装置では7Lで1.5Tとか0.7Lで0.55Tなど、ほんの少しの液体ヘリウムで超伝導状態を作る装置もあります。

 

このような装置はクエンチパイプの設置の必要はありません。

そうなると今回のコナンの映画のような事件は起こらなくなります。

 

ちなみに映画ではMRI装置にベッドが吸着しているシーンがあった気がします。

こんな感じ。

でも、クエンチを起こしたMRI装置は磁場が消失しているのでベッドが吸着したままになることはありません。

 

コナンの映画でMRIのことを説明するとは思ってもいませんでした。

 

以上です。

さようなら!

 

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カテゴリー: MRI