MRI 3.5ppm
今回は、3.5ppmについてです。
3.5ppmってピンときますか?
ピンとくる方は、MRI初級を卒業しています。
3.5ppmは水との化学シフトの差です。
そもそも化学シフトについては以前かきましたが、
MRIでは水との共鳴周波数の差になります。
水は4.6ppmで、脂肪が1.1ppmです。
その差が3.5ppmです。
ですので、化学シフトを利用した脂肪抑制は水から3.5ppmはなれたところの信号が抑制されるよう脂肪抑制パルスを印加します。
そもそも水の4.6ppmって何?ってなるかなと思います。
これはテトラメチルシランの共鳴周波数を0として、それからどの位、共鳴周波数の差があるかを示すものです。
その差が水で4.6ppm、脂肪が1.1ppmとなります。
ppm表示だと磁場強度に関係しないのでいつも3.5 ppmの差になります。
しかし、それでは実際の画像上の化学シフトの差がわからないのでHz表示に変換します。
1.5Tの共鳴周波数ω=γB0=(42.6MHz)(1.5T)=64MHz
γ:磁気回転比1Hの場合42.6MHz、ppm:parts per million:10-6
3.5 ppm=(3.5×10-6)(64×106)=220Hzとなります。
これを理解すると化学シフトを利用した脂肪抑制が理解できます。
ホントに3.5ppm差なのか?
というのも脂肪は1種類だけではないからです。
なぜ、3.5ppmだけなのか?
それは人体を構成する脂肪の多数が1.1ppm付近にあるからです。
ホントはメチル0.9、メチレン1.3これがほとんとで平均1.1。
水が4.6 だから、4.6-1.1=3.5ppm になります。
でも、もっと脂肪あるよ!
ということで脂肪のMRS登場です。
実際の皮下脂肪のMRSです。
これをみるとわかるとおり、大多数が1.1付近になります。
では、ほかの脂肪は関係ないのかということになります。
1.5Tならば、あまり関係ありません。
それは、1.1 ppm付近以外の脂肪の信号は強くないからですね。
あと、EPIでも化学シフトアーチファクトを起こさないですから。
当然、共鳴周波数の差がないものならば、化学シフトの差はないので化学シフトアーチファクトはでません。
ちなみに通常の脂肪抑制をあえてしないDWI画像がこれです。
このずれている信号が1.1 ppm付近の脂肪になります。
ですが、3Tになるとずれていない脂肪も問題になります。
私も3Tを使うまで気にならなかったのですが、腹部 DWIでは化学シフトしない脂肪信号が強く画像が悪い印象を受けます。
まぁ、化学シフトしなからいいでしょといわれればそれまでですが、
1.5Tの方がDWIはきれいと言われる理由のひとつに、この脂肪が目立たないことにあります。
(もう一つはゆがみが少ないことです。)
そして、3Tの脂肪が消えない理由を、4.6ppm付近の脂肪せいだと知った時「なるほどー」と思いました。(化学シフトを利用した脂肪抑制では消えないのが当たり前)
ですが、ふと思ったのです。
確かに4.6 ppm付近の脂肪のせいで、3TのDWIはきれいじゃないのだけれど、4.6ppm付近に脂肪があるのは1.5Tでも同じじゃないかと。
磁場強度が増えても、人間の脂肪の量は変わりませんからね。
立派な本に書いてあったら本当のことと疑いませんが、そうじゃない時もあるのではないかと感じました。
なぜ3TのDWIの脂肪は目立つのか考えてみた。
化学シフトのせいではなければ何が違うのか?
こう考えると、磁場強度が上がって変わるのはT1値です。
T2値は変わらないとされているので、T1値のせいだ!
と、あつく思ったのです。
そこで、また壁が。
DWIでは基本T2強調になるので、T2値が変わらなければ1.5でも3Tでも同じではないかと思ったのです。
だけど、まだ深く考えるとピカッときました。
T1値の延長度合が組織によって変わるのだと。
たとえば、肝臓が対象なら肝臓のT1値の延長は1.5から3Tになると、580→800ms程度。
皮下脂肪は340→380ms程度。
さきほど述べたようにDWIはTEで言えばT2強調になります。
よってT1値が延長するほど信号は出にくくなります。
つまり1.5から3TになるとDWIで肝臓のT1値は延長するので信号は弱くなるけど、脂肪のT1値はあまり延長しないので、信号は弱くなりません。
よって、相対的に脂肪の信号が強くなるのです。
おそらくこれが正しいと思います。
3Tを使っていてずっと考えていたけど、スッキリできました。