MRI k-space
k-spaceってMRIを複雑なものにしている根本ですね。
ですが、あまり深く考えず理解していきましょう!
k-spaceとは、MRIの信号を置く場所
MRI信号は最初アナログの波データです。
その信号を配置する空間がアナログk-space。
アナログk-spaceをデジタル信号に変換したものがデジタルk-space。
デジタルk-spaceをフーリエ逆変換したものがMRI画像です。
kはドイツの分光学者のKayserさんにちなんだものらしいです。
小文字なのは、絶対温度のK(kelvin)とかぶらないようにですね。
k-spaceは直感では理解できない!
どうしても、k-spaceをデジカメの画素のような感覚でとらえようとしてしまいます。
それが間違い。
今までにある感覚をこわさないとk-spaceは理解できません。
k-spaceの大きさ
k-spaceの大きさはSNに関係します。
k-spaceと実空間は同じMatrixサイズです。
ですのが、FOVを大きくするほど(Matrixを比例して大きくしても)、SNは上がります。
この理由はMRI画像(座標)とk-spaceの位置(座標)が一対一に対応していないからです。
k-space全体でMRI画像を作っているから、
k-spaceが大きくなるほど収集する波の数が増加し、
その分データが増加しSNが上がるのです。
k-space=みんなはひとりのために、ひとりはみんなのためにです
=全データは1画像のために、1画像は全データだよ(ちょっと苦しい)。
例えば、脳の撮像で正方形のFOVではなく側頭部のFOVを少し減らして撮像する場合があります。
メリットは時間の削減ですが、トレードオフはSNの低下です。
頭の横の空気の部分だから、削っても損しないと思うじゃないですか?
ですかk-space的に考えると、扱う波数が減少するのでSNは低下するんですね。
なかなかX線画像やCTの感覚だと理解できないことです。
また、撮像途中で被写体が動くとアーチファクトになる場合があります。
CTでは撮像している断面になりますが、
MRIではk-spaceのどの部分を充填しているかで、
アーチファクトは異なります。
実際の撮像
SEの場合、1TR間に1つechoを収集します。
そのecho信号は1つの波です。
その波は1行の波です。
波1行を充填する場所がk-spaceの1行になります。
k-spaceを2Dで考えると、周波数方向と位相方向からなります。
1行を充填する方向は周波数方向です。
そのため1TR間に1周波数方向のデータが充填されます。
ですので、k-spaceの位相方向が256列とすると、
256回分、TR時間がかかります。
TRが500msだと500×256=128000ms=128s
約2分ですね。
この位相エンコードをするために、各列で位相エンコード傾斜磁場を変更しています。
TRが3000msなどのT2強調では撮像時間が長くなるため、FSEが考えられたのです。
FSEではk-spaceに充填しているechoの時間が異なります。
例えば、echo spaceが10msでETLが10とすると、
TEは10、20、30、…80、90、100のデータをごちゃ混ぜにした信号で画像を作ることになります。
これがボケの原因です。
k-spaceの場所にはそれぞれ役割がある!
k-spaceの中心は画像のおおまかな形、コントラストを、
周辺は細かい仕上げをするように決まっています。
k-spaceの中心に配置するechoは、
位相エンコード傾斜磁場をかけていない最も強いechoが配置されます。
k-spaceの中心から離れるにしたがって、
位相エンコード傾斜磁場を強くして弱いechoを配置していきます。
実効TE
FSEではk-spaceの中心に充填するTEを実効TEと呼び、
これが画像の表記TEとなります。
ですので、FSEのT1強調を撮像しようと思ったら、
ETLを10とかには設定してはいけないわけです。
コントラストがおかしくなりますから。
撮像時間は位相エンコードが握っている
SEで256列位相エンコードすると256TR分時間がかかります。
そこで、FSEや長方形FOVといったデータを減らす工夫をします。
パラレルイメージングやハーフフーリエも位相エンコードを減らす方法ですね。
k-space充填(じゅうてん)の順番も重要
k-spaceを端から順に充填する方法であるsequentialやlinearとよばれる方法だと、
実効TEはETLの中間になります。
ですので、T2強調などのTEの長い撮像に用いられます。
これとは異なり、centricやlow-highとよばれる方法は、
k-spaceの中心から充填するので、TEの短いT1強調向きです。
また、造影検査で造影ピークをとらえたい場合は、
k-spaceの中心を充填するタイミングがとても重要になります。
k-spaceでMRの勉強につまずく方もおおいと思います。
ですが、直感ではなく独特のルールを覚えてしまえばk-spaceも怖くない!
と、思います。