MRI 周波数エンコードと位相エンコード
2019.8.5改訂しました。
ちょっとくわしく書いたよ!
今回は、周波数エンコードと位相エンコードです。
ご存じのとおりMRIデータは直接画像化できません。
そこで、k-spaceに信号を配置するのです。
そのk-spaceの縦軸と横軸がそれぞれ、周波数エンコードと位相エンコードです。
どっちが縦とか横とか決まっていませんが。
MRI信号を周波数差と位相差によってk-spaceを充填するのです。
周波数エンコードと位相エンコードにはそれぞれ特徴があります。
周波数エンコード
周波数の差を利用する。
簡単にすぐできるのが周波数エンコードです。
エコー収集時に傾斜磁場をかけて、
それぞれのピクセルごとに周波数の差をつけるわけです。
周波数の差を利用しているので、chemical shift artifactが出ます。
周波数エンコード方向には折り返しアーチファクトはでません。
この理由として周波数はFOV外にも差をつけることができるので、区別できるのですね。
これが位相方向とは異なる部分です。
周波数エンコードがX軸にもY軸にも適用できればもっとMRIは簡単なのでしょうが、
残念ながら1方向しか周波数エンコードは利用できません。
というのも、ピクセル内に2方向の周波数差は区別できないからです。
そこで、もう1方向に位相エンコードの登場です。
位相エンコード
位相エンコードは位相差を利用する。
そのままですが。
k-spaceの各行で微妙に位相をずらして、位相差をつけるのです。
この位相エンコードに時間がかかります。
基本的には1TRで1位相エンコードです。
ですので、撮像時間はTR×位相エンコード数×加算回数になります。
位相エンコードにはたくさんの欠点があります。
折り返しアーチファクトが出る。
動きのアーチファクトも位相エンコード方向に出現します。
血管の拍動のアーチファクトなんかも位相エンコードに出ますよね。
これも位相エンコードに時間がかかるからです。
折り返しアーチファクトも位相エンコード方向に出ます。
これはFOVが被写体より小さいときに出現します。
FOV外の位相差がFOV内の位相差と区別できないからです。
これは周波数エンコードとは異なる部分です。
これを防ぐには、位相エンコード方向のFOVを被写体よりおおきくするしかありません。
そのせいで、位相エンコード数はふえて撮像時間が延長します。
撮像時間を短縮するにはTRを短くする、位相エンコード数を減らす、加算を減らす。
この3つです。
TRを減らすとコントラストが低下する、SNが低下するなどが考えられます。
加算を減らすとSNが低下しますし、そもそも加算1回なら減らすことができません。
そこで、位相エンコード数を減らすのですね。
位相エンコード数を減らすには、長方形FOV、パラレルイメージング、最近では圧縮センシングなどですね。
もちろん位相エンコードも減らすとSNは低下します。
長方形FOVの利用法として、
被写体の短い方向を位相エンコード方向に設定します。
頭部ならRL方向。
腹部ならAP方向。
ですね。
ただし、脊椎のサジタルでは動きの影響を減らすため、
あえて長方形の長い方を位相エンコード方向に設定したりします。
これは学生の方で経験がないとピンとこないでしょうが、たとえば胸腰椎サジタルならAP方向のほうが、FOVは短くできますが、頭尾方向を位相エンコード方向に設定して呼吸の影響を減らしています
骨盤腔でも横断像の場合は被写体の距離が短いのはAP方向ですが、動きのすくないRL方向にあえて位相方向を設定したりします。
これらは時間よりアーチファクトが問題になるからですね。
パラレルイメージングはここで。
圧縮センシングはここで。
位相エンコード方向の動きのアーチファクト対策は、位相方向と周波数方向を入れ替える。
ほかには、k-spaceの収集をPROPELLAR法などのラジアル収集に変えるなどです。
ラジアル収集とは、放射状にk-spaceを充填(じゅうてん)する方法です。
これにより、位相方向が全方向になり動きのartifactが分散するとともに、
k-spaceの中心を何度も充填するので、動きの補正ができるようになります。
ちなみに位相エンコードは2方向に対応できます。
それが3D撮像ですね。
スライス方向にも位相エンコードを設定することで、3D撮像が可能になります。
その分、位相エンコードが増えるので、さらに撮像時間が延長します。
周波数エンコードと位相エンコードでは位相エンコードにより特徴があります。
位相エンコードの特徴を理解することにより、
MRIが上手にあやつれるようになれます。
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