MRI FAT SAT
脂肪抑制は脂肪を抑制する技術です。
脂肪抑制する理由は、
- 脂肪かどうか判別したい
- アーチファクト低減
- 脂肪信号抑制による視認性向上
などです。
1.は脂肪の有無で良悪性の鑑別をする場合があります。
2.は腹部の呼吸同期などで高信号の脂肪がアーチファクトの原因になるので、その防止に用います。
3.は高信号になる脂肪を抑制することで、脂肪以外の濃度表示範囲が広がり観察しやすくなります。造影後に脂肪抑制を付加するのはそのためです。
脂肪抑制の種類
-
T1の差を利用したもの
-
chemical shiftを利用したもの
になります。
T1の差を利用したものは、STIRになります。IRパルス印加後、脂肪の縦磁化が0になるまで待って(TI)から撮像します。
1.5Tにおいて、脂肪のT1は250ms程度なので、TI=0.693×250=170msになります。
3TではT1が延長するのでこれより長くなります。
STIRは脂肪に特異的ではなく、T1に依存しますので、脂肪ではなくてもT1が脂肪に近いものは抑制されます。
造影後、T1短縮する組織には注意が必要です。
静磁場の強さに依存しない方法です。
STIRはすべての組織が反転され、脂肪の回復は1番速く、収集信号はマイナスになります。
このため絶対値表示を行います。
また、他の脂肪以外の組織は回復途中で信号を収集するのでSNは低下します。
chemical shiftを利用したものは数種類あります。
まずは、CHESS法です。
1.5Tであれば、水と脂肪の共鳴周波数の差が224Hzですので、水から224Hz離れた信号が抑制できるように90°パルスを印加する方法です。
抑制されたら脂肪と言えます。
CHESS法は高磁場ほど共鳴周波数の差がひらくので有利になります。
3Tでは447Hzですから。
次に、SPAIR法です。
これは周波数選択的に180°IRパルスを印加し、脂肪の縦磁化が0になるまで待って撮像します。
これはB1不均一に強くなります。
STIRとの違いは周波数選択的という点です。
脂肪以外のSNは低下しません。
CHESS法より時間はかかりますが、脂肪抑制の効果は大きくなります。
chemical shiftを利用した脂肪抑制では、水とchemical shiftの差がない脂肪(5.3ppm、4.2ppm)がありますので、その脂肪信号は消えません。
次に、Dixon法です。
1.5Tでは224Hz共鳴周波数が違いますので、1/224=4.5msごとに位相(in phase)がそろいます。
この半分の2.3ms(opposed phase)では逆位相になります。
TE2.3msで信号収集すると、同一ボクセル内にある水と脂肪信号が相殺され信号が低下します。
皮下脂肪などボクセル内に脂肪しかない部分の信号は低下しません。
次に、2項パルスを利用した方法です。
in phaseとopposed phaseのタイミングにあわせ、励起パルスを分割して、水のみ励起するもの。
例えば、90°パルスであれば最初に45°パルス印加して、opposed phaseになるタイミングで45°パルスを印加すれば脂肪の磁化が0になります。
分割方法はパスカルの三角の1:1、1:2:1、1:3:3:1などです。
分割数が多いほど脂肪抑制の効果はおおきくなりますが、最短TEが延長します。